COLUMN コラム

2025.06.19

2025年熱中症対策義務化で建設現場はどう変わる?
現場作業員・監督者が知るべき最新ポイント

2025年6月1日、職場の熱中症対策がついに法令で義務化されます。
特に建設現場は、気候変動の影響も受けて毎年多くの熱中症災害が発生しており、今回の法改正は“現場の安全と働き方改革”を大きく進める転換点となります。
「真夏の現場が本当に安全になるのか?」「どんな新しい対策が必要?」と不安や疑問を抱える方も多いはずです。
この記事では、省令改正の内容、最新の現場管理法、作業員・管理者が押さえるべき具体的対策、そしてキャリア環境への影響まで、最新行政文書と公式パンフレットをもとに分かりやすく解説します。

熱中症災害の現状と法改正の趣旨

・夏季(6~8月)、建設現場を含む職場での熱中症災害は年々増加し、令和6年は休業4日以上の死傷者数が1,195人と過去最多。死亡災害も3年連続で30人超。
・災害要因の多くが「初期症状の放置・対応の遅れ」。
・法改正の狙いは、“重症化・死亡災害を防ぐため、早期発見・迅速な現場対応を徹底する仕組みを全ての事業者に義務付けること”。

どこがどう変わる?熱中症対策の義務化内容

● 対象となる作業・現場
・WBGT(湿球黒球温度)28℃以上または気温31℃以上の「暑熱な場所」で、1時間以上または1日4時間超の継続作業が見込まれる場合すべて。
・建設現場など屋外や仮設現場も、出張・移動・複数社混在現場も含む。

● 事業者・現場管理者の新たな義務
1.報告体制の整備・周知
・作業員が「自分や他者の異常(熱中症症状)」を発見した際、即時報告できる体制を事前に作り、全員に周知。
・責任者の連絡先掲示・メール通知・朝礼での伝達など具体策必須(例:掲示例はPDF8p)。
・作業員同士が健康状態を確認し合う「バディ制」、巡視、ウェアラブルデバイス併用も推奨。

2.対応手順の作成・周知
・「離脱」「身体冷却」「必要時は医師診察や救急要請」など、現場実態に即した対応フローを文書化し周知。
・一例:意識が悪ければ「作業服を脱がせ水で冷却・涼しい休憩所へ→異常時は救急隊要請→医療機関搬送」(PDF6・9・10p)。
・体調が回復しても“帰宅後に悪化することがある”ため、「急変時の連絡体制」まで決めておく。

3.複数社現場の場合の対応
・元方・請負どちらの事業者も同等に義務を負う。
・連絡先・手順は共同で掲示・文書配布・朝礼等で徹底する必要あり。

実際の建設現場で行うべき熱中症対策

● WBGT測定・管理
・現場ごとにWBGT指数計を設置。測定が難しければ熱中症予防サイトやスマホアプリの数値利用も可。
・WBGT値・作業強度別に基準値があり(例:高強度作業は26℃、中程度作業は28℃)、この値を超えたら必ず対策を強化。

● 環境・作業管理
・直射日光・地面照り返しを遮る屋根やシートの設置、冷房・通風・除湿機の導入。
・冷房付き・日陰の休憩場所を設置。足を伸ばして休める広さ、氷・冷タオル・シャワー等も近隣に用意。
・作業時間の短縮、休憩頻度UP。工程管理で「炎天下の長時間作業」を避ける。
・暑熱順化:新規作業員は7日以上かけて徐々に慣れさせる。

● 健康・服装管理
・作業開始前の健康チェック(睡眠・体調・朝食・飲酒歴等)を全員で記録・確認。
・自覚症状の有無にかかわらず、水分・塩分を20~30分ごとに必ず摂取。管理者はチェック表で確認。
・通気性・冷感の良い作業着・空調服等の着用推奨。
・加齢や疾患(糖尿病・高血圧など)への個別配慮も必須。

熱中症発生時の具体的な初動対応フロー

・症状例:「ふらつき」「生あくび」「大量発汗」「筋肉痛」「めまい」「頭痛」「吐き気」「意識障害」など。
・初期対応は“見つける→判断する→対処する”が原則
 1.【見つける】作業員の様子が「いつもと違う」「ぼーっと」「返事がおかしい」など、すぐ報告。
 2.【判断する】意識異常や異常反応ならすぐ休ませ、冷却。必要時は救急要請。
 3.【対処する】自力で水分摂取できる場合は経過観察。できなければ搬送。搬送や観察中は絶対に一人にしない。
・回復後も体調変化に注意、急変時は直ちに医療機関へ。

現場の変化とこれからのキャリア・働き方

・全員が安心して休憩や申告ができる「現場文化」へ
義務化によって、「我慢は美徳」「新入りは我慢」が通用しない職場へ。声かけ・報告・巡視・バディ制で、若手や未経験者も安全に働ける環境が広がります。
・ブラック企業対策にも有効
法令違反時は労基署による指導・是正勧告、罰則も。事業者・管理職の責任が明確化されるため、「使い捨て」的現場や危険放置体質が淘汰される方向へ。
・働き方・キャリアもポジティブに
働きやすさ重視、専門性・安全性が高まる現場は「将来の選択肢」としても安心です。

まとめ|熱中症対策義務化は建設現場の「働き方改革」そのもの

2025年の熱中症対策義務化は、建設現場の安全文化を一新し、若手や未経験者・女性も含めて全員が安心して働ける現場づくりを大きく後押しします。
今の職場で「健康や安全に不安がある」「自分のキャリアを見直したい」と感じる方は、この機会に建設業界で新しい働き方を目指してみませんか?
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参考

1.「職場における熱中症対策の強化」
鹿児島労働局掲載(パンフ&改正内容)
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/nettyusyou/2025-0418-7.html
2.「労働安全衛生規則の一部を改正する省令(施行通達)」
令和7年5月20日付通知(基発0520第6号/労働安全衛生規則一部改正省令の施行通知)
https://www.mhlw.go.jp/content/001490909.pdf
3.「職場における熱中症対策の強化について」県労働局ページ
熊本労働局:
https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/newpage_01552.html
宮城労働局:
https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/redirect/20250418necchusyo.html
秋田・富山労働局(パンフ・施行通知説明など):
https://jsite.mhlw.go.jp/akita-roudoukyoku/newpage_02520.html
4. 厚生労働省公式パンフレット/PDF(熱中症対策ガイド)
職場向け熱中症対策パンフレット・リーフレット
https://jsite.mhlw.go.jp/saga-roudoukyoku/newpage_02665.html
働く人の今すぐ使える熱中症ガイド(WBGTや応急処置含むPDF)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133_00001.html