
2025.07.02
銀行がなぜ“人材ビジネス”に参入?―人材業界の最新動向と建設業界へのインパクト
近年、銀行をはじめとした異業種の企業が「人材ビジネス」に次々と参入する動きが加速しています。特に地方銀行による人材派遣や人材紹介の新規事業は、人材業界の最新動向の一つとして注目を集めています。
背景には、終身雇用制度の崩壊や働き方改革の浸透、そして建設業界をはじめとした多くの産業で慢性的な人手不足が深刻化している現状があります。
ブラック企業で消耗し将来に不安を抱えている20代、長期フリーターや短期離職を繰り返してキャリアに悩む方々にとっても、「人材の流動性」は今後の生き方や働き方を考えるうえで重要なテーマとなっています。
本記事では、銀行が人材業界へ参入する理由や業界の変遷、そしてその波が建設業界、とりわけ「施工管理」にどのような影響を及ぼすのかを、最新の事例を交えて解説します。
銀行が人材ビジネスに参入し始めた背景
近年、地方銀行や都市銀行を含め、金融業界が人材ビジネスへと活発に参入しています。なぜ銀行がこれまでの金融サービスだけでなく、「人材紹介」や「労働者派遣」などの分野に進出するようになったのでしょうか。
業界を取り巻く社会的・経済的な変化
銀行をはじめとする金融機関は、長引く低金利政策やデジタル化の波によって、従来の預貸業務だけでは十分な収益を上げにくい時代に直面しています。金融機関が新たな収益源を模索するなかで、「人材ビジネス」は注目の的となっています。
また、少子高齢化や人口減少、働き方改革による労働市場の変化は、多くの企業にとって深刻な課題です。従来の安定した雇用の仕組みが崩れ、企業も個人もより柔軟な働き方を模索するようになりました。
規制緩和と金融機関の新たな収益源
近年、金融機関の本業外業務に関する規制が緩和され、銀行が「他業銀行業高度化等会社」といった形で新規事業に参入する道が開かれました。こうした背景を受け、東邦銀行がIT人材分野に特化した子会社「東邦ITヒューマンソリューションズ」を設立したことや、北洋銀行がコンサルティング子会社を通じて海外人材の採用・派遣ビジネスを始めたことは、業界の大きな転換点と言えるでしょう。
人材流動性の高まりと人材業界の変遷
社会全体で「人材の流動性」がキーワードとなっています。かつての日本は終身雇用と年功序列が主流でしたが、今や多くの人が転職やフリーランス、派遣など多様な働き方を選ぶようになっています。
労働市場の流動化が加速した理由
テクノロジーの進化やグローバル化、そして新型コロナウイルスの影響もあり、企業の働き方や人材活用の考え方が大きく変わりました。企業は必要なスキルを持つ人材を柔軟に採用・配置することが求められ、個人も自分の能力を活かせる場所を選ぶ流れが加速しています。
従来の人材サービスとの違い
従来の人材サービスは「求人と求職のマッチング」が中心でしたが、現在は「人材育成」「キャリア支援」「海外人材の活用」などサービスが多様化しています。たとえば東邦銀行のように、ITスキル育成から紹介・派遣まで一貫して手がけるモデルや、北洋銀行のように日本語教育を含めた海外人材の派遣など、従来とは異なる新たな価値を提供しています。
東邦銀行・北洋銀行の事例から見る最新動向
実際に銀行が人材ビジネスへ参入している事例を見ていきましょう。
IT・海外人材分野での具体的な取り組み
東邦銀行は、IT分野の人材育成・紹介・派遣を目的とした新会社を設立。地元・福島県を中心に、地域企業のデジタル人材不足を解消することを狙いとしています。一方、北洋銀行の子会社は、インドネシアなど海外で採用した人材を日本国内の建設会社に派遣するビジネスを本格化させています。日本語教育や現地でのリクルート活動までワンストップで対応することで、企業のニーズに応える仕組みを整えています。
地方銀行による地域密着型サービスの特徴
銀行系の人材ビジネスは、単なる人材の斡旋だけでなく「地域経済の活性化」にも貢献しています。特に地方銀行は、地元企業とのつながりや地域課題への理解を活かし、地域ニーズに合った人材サービスを展開できる点が強みです。これは都市部にはない、地域ならではの付加価値となっています。
銀行系人材サービスが建設業界に与える影響
それでは、こうした銀行系の人材ビジネスが、建設業界にはどのような影響を与えるのでしょうか。
建設業界の人手不足解決にどう貢献できるか
建設業界は、少子高齢化や若手の入職者不足により、慢性的な人手不足が続いています。特に地方では人材確保がより困難です。銀行系人材サービスは、金融ネットワークを活かして地元企業と人材を結び付けたり、海外からの人材を建設現場に派遣したりと、業界の課題解決に直接貢献することが期待されています。
施工管理経験から広がる新しいキャリアの可能性
建設業界の中でも「施工管理」は現場の中心を担う重要な職種ですが、近年、その経験やスキルを活かしてさらなるキャリアの広がりを目指す動きも増えています。
例えば、現場で培ったマネジメント力や技術知識を活かし、若手や未経験者への「教育・研修担当」として指導する道や、人材サービス企業の「マッチングコーディネーター」として、企業と適切な人材をつなぐ役割を担う人もいます。
こうしたキャリアの多様化は、施工管理職ならではの現場感覚やマネジメント経験が、教育・育成、マッチング分野でも高く評価されている証拠です。現場での実体験を伝えられる人材は、今後ますます多くの企業で求められるようになるでしょう。
今後の展望と、建設業界で求められる人材像
銀行系の人材ビジネス参入は、業界横断型で人材活用の幅を広げています。今後の動向と、建設業界で求められる人材像について考えます。
業界横断型の人材活用の広がり
銀行のノウハウやネットワークを活かした新しい人材サービスは、今後ますます多様な業界に波及していくでしょう。特に建設業界では、「即戦力人材」だけでなく、「多様なバックグラウンドを持つ人材」や「デジタルスキルを持つ人材」の需要が高まっています。これにより、異業種経験やデジタル分野に強い人材が、建設業界でも活躍できる環境が整いつつあります。
変化に適応できる“キャリア”の考え方
時代の変化が激しい今、「1つの会社で一生働く」という考え方にとらわれず、自分の強みや経験を活かして複数の業界を渡り歩くキャリアパスも十分に現実的です。施工管理として得た現場の知識やリーダーシップを土台に、人材教育やマッチング、さらにはITやコンサルティング領域へとステップアップする道も広がっています。新しい人材ビジネスの動きを活用することで、未経験分野へのチャレンジや、自分に合った働き方を見つけやすくなるでしょう。
まとめ
銀行をはじめとする異業種の人材ビジネス参入は、業界全体の活性化だけでなく、建設業界など人手不足に悩む分野への新しいソリューションとして今後ますます注目されるでしょう。
人材の流動性が高まる今、従来のキャリアに縛られず、自分の強みを活かせる環境や新しい挑戦を選ぶ動きが広がっています。
もしあなたが今の働き方や将来のキャリアに不安を感じているなら、こうした業界の変化や新しい可能性を上手く活用することが、次の一歩につながるかもしれません。
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参考
■東邦銀行「東邦ITヒューマンソリューションズ設立」
https://www.tohobank.co.jp/cms_source/data/newsrelease/files/20250509-2.pdf
■北洋銀行グループ「外国人材派遣事業」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000150123.html
■日本人材派遣協会「統計データ」
https://www.jassa.or.jp/know/data/
■人材サービス産業協議会「人材サービス産業の課題」
https://j-hr.or.jp/aboutmarket/challenge/
■リクルートワークス研究所「人材サービス業界の展望」
https://www.works-i.com/research/labour/column/trend/detail067.html
■国土交通省北陸地方整備局「建設業の現状と課題」
https://www.hrr.mlit.go.jp/gijyutu/burokkukouhyou/purpose/genjo%26kadai.pdf
■施工管理職のキャリアプランコラム https://recruit-mac.net/columns/construction-management/construction-management-career-plan/
■日本経済新聞「北洋銀系、インドネシア採用者を派遣」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO89557850T20C25A6EE9000/
■日本経済新聞「東洋銀、IT人材関連事業に参入」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO89734480R00C25A7L01000/