COLUMN コラム

2025.07.11

建設業のAI導入が加速中――大成建設の床振動抑制システムに見る、最新DX動向と今後の展望

近年、建設業界では「AI(人工知能)」導入の動きがますます加速しています。
資材価格の高騰や深刻な人手不足が続くなか、現場作業の効率化やコスト削減、そして働きやすさの実現が強く求められる時代です。
「ブラックな環境に疲れた」「フリーターのままで将来に不安がある」「何度も転職を繰り返し、自信を失いかけている」――
そんな悩みを持つ20代の皆さんにも、AI時代を迎えた建設業界の“変化”は大きなチャンスになり得ます。
今回は、国内最大手のひとつである大成建設が開発した「AIを活用した床振動抑制システム」を例に、
なぜ今、建設業界でAI導入が求められているのか? そして“建設DX”によってどんな新しい働き方や価値が生まれているのか――
現場のリアルな事例を交えてわかりやすく解説します。

建設業界で進むAI導入とDX化の流れ

建設業界は今、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)など最新技術の導入が急速に進んでいます。その背景には、長らく続く人手不足や高齢化、そして資材価格の高騰といった業界共通の課題があります。特に大規模プロジェクトや複雑化する現場では、効率化や省力化が求められるため、従来のやり方だけでは限界を感じる企業が増えてきました。
なぜ今、これほどまでにAI導入が注目されているのでしょうか?
その理由のひとつは「働き方改革」と「現場の負担軽減」です。長時間労働や厳しい労働環境に悩まされる現場スタッフをサポートするため、AIによる作業自動化や、データ分析による工程の最適化が進んでいます。また、施工ミスや事故リスクを減らすためにも、AIを活用した品質管理や安全管理のシステム開発が急がれています。
たとえば、ドローンやAIカメラを活用した現場監視、建材発注や工程管理の自動化などは、すでに多くの現場で導入されはじめています。こうした「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、働きやすさの向上や若手人材の定着促進にも大きな役割を果たしつつあるのです。

大成建設が挑む「床振動抑制AI」の革新技術

そんななか、国内大手の大成建設が新たに開発したのが、AIを活用した床振動抑制システム「ティー・サイレント・ティーエムディー・フロア」です。
オフィスビルや大型施設では、床の振動――特に多くの人が同じリズムで歩くと発生する“共振”が、利用者に不快感を与えたり、建物の価値を損なったりする原因になっていました。従来は大掛かりな設備やコストのかかる改修が必要でしたが、大成建設はここにAI技術を導入することで大きなブレイクスルーを実現しました。
開発の背景には、働き方やオフィスレイアウトの多様化があります。たとえば、個室席やフリーアドレスの導入により人の動線が変化し、予期せぬ場所で共振が発生するケースが増えています。
大成建設の技術開発チームは、「床の揺れ方」のデータをAIで解析し、装置の最適な配置パターンを自動的に割り出す仕組みを確立。これにより、従来よりも少ない装置数で効果的に振動を抑え、装置の小型化とコストダウンも実現しました。設置も簡便になり、OAフロアのパネル1枚分のスペースがあれば対応できる点も特徴です。
結果として、製品価格は従来比で1~2割、場合によっては最大5割程度も抑制。オフィスビルのリノベーションや新築時、フィットネスジムを併設する複合ビルなど、多様な現場で活用が期待されています。

実際のオフィスビル改修で見えるAIの効果

床振動問題は、特に既存ビルの改修時に顕在化しやすい課題です。
「社員の往来が多い区画を増やしたら、思わぬ場所で床が揺れるようになった」といったケースもあり、これまでは設計段階で想定できなかったリスク対応に苦慮することが多くありました。
大成建設のAI床振動抑制システムは、そうした課題に対し、現場ごとに最適な設置方法を提案できる点が評価されています。たとえば、200~300平方メートルのビル1フロアにつき、約200万円から導入が可能(工事費は別途)。従来に比べてコストパフォーマンスも高く、古いビルの改修やテナント入れ替え時に「新しい価値」を生み出しています。
さらに、近年は新築の複合ビルでフィットネスジムやイベントスペースなど、利用パターンの多様化が進んでいます。
そのため、「床振動」への対応力は、ビルの価値を守るだけでなく、快適で安心して利用できる空間づくりにも直結しています。
こうした事例は、AI技術が「目に見えない快適さ」や「安全性向上」にどのように役立っているかを象徴しています。

建設業界の省人化・効率化を支えるAI技術の広がり

床振動抑制以外にも、建設業界ではさまざまな分野でAI技術の応用が進んでいます。
たとえば、現場の人員配置や資材発注の最適化、危険作業の自動化、工事進捗のリアルタイムモニタリングなど、AIによって「人手不足」をカバーしつつ作業の効率化・高精度化が実現しています。
AIカメラを使った現場安全管理や、センサーと連動した設備点検、BIMデータを活用した建築プロセスの自動化――こうしたDXの進展により、「重労働でブラックな仕事」というイメージも徐々に変わりつつあります。
若い世代や未経験者でも、テクノロジーの力を活かして活躍できる場が拡大しているのです。
また、建設現場だけでなく、設計や計画段階、さらにはビルの維持管理・アフターサービスまで、AIが活用される範囲は今後さらに広がっていくでしょう。現場作業員だけでなく、IT・デジタル分野の知見を持つ人材も求められる時代が到来しています。

これからの建設業界と若手人材へのメッセージ

今、建設業界は「AI時代」に突入し、さまざまな変革が進んでいます。
これまでブラックな環境に苦しんでいた方や、フリーター・短期離職を繰り返してきた方にとっても、「再スタート」の場として大きな可能性を秘めています。
AI・DXを活用した新しい現場は、これまでとは違い、ITリテラシーやチャレンジ精神が活きる“成長フィールド”へと変化しています。
たとえば、AIシステムの操作やデータ管理、現場の課題発見力など、「人にしかできない仕事」もますます重要になっています。
これからの建設業界で活躍するためには、専門知識や現場経験だけでなく、「新しい技術を柔軟に受け入れる姿勢」が求められます。
未経験・若手層にも“学び直し”や“キャリアチェンジ”のチャンスが多い今こそ、自分の将来を前向きに考えてみませんか?

まとめ

AI技術の導入が加速する建設業界は、今まさに「働く人」にとっても大きなチャンスが広がる時代です。
新しい技術にチャレンジしたい方、働きやすい環境を求める方、これからのキャリアに悩む方も――
ぜひ、今の建設業界の“進化”を知り、自分らしい未来を見つけてみてください。
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あなたの一歩が、業界の未来を変える原動力になるかもしれません。

参考

■大成建設公式リリース
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250707_10537.html
■日刊建設工業新聞
https://www.decn.co.jp/?p=175544
■建設ニュース
https://www.kensetsunews.com/archives/1099912
■日本経済新聞「大成建設、オフィス床の微振動抑制」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO89953020Q5A710C2TB2000/