
2025.09.24
建設業界に夏休み?働き方改革が進む“現場のいま”──猛暑対策から見えた、働きやすい業界への変化
猛暑が続く近年の夏。都心では10日連続の猛暑日を記録するなど、建設現場にとって過酷さは年々増しています。「建設業はきつい、休めない」というイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし今、そんな業界の常識が大きく変わり始めています。
国土交通省が主導し、地方整備局発注の土木工事に「夏休み」を導入する取り組みが本格化。熱中症対策や働き方改革の一環として、現場での休暇取得や工期調整が“制度として”進められているのです。
この記事では、こうした最新の動きと現場の声を紹介しながら、「建設業界はこれから働きやすくなっていく業界である」という事実と、それがあなたのキャリアにどうつながるのかを紐解いていきます。
なぜ今、建設業界で“働き方改革”が求められているのか?
建設業界は長年、「きつい・汚い・危険」という“3K”の代表格とされ、慢性的な人手不足に悩まされてきました。特に夏場は、炎天下での作業が当たり前となる現場も多く、熱中症による労働災害は他業種に比べても突出しています。
厚生労働省の統計によれば、過去5年間で最も熱中症による死傷者が多いのは建設業。加えて、2024年4月から時間外労働の上限規制(通称“2024年問題”)が建設業にも適用され、業界全体で「働き方を見直す」動きが強まっているのです。
このような背景から、現場で働く人たちの健康と働きやすさを守るために、制度・法律・現場運用のすべてが連動して改革に取り組む必要が生じています。
「土木工事の夏休み」導入へ──国交省の本気度とは?
こうした課題に対応すべく、国土交通省は地方整備局が発注する土木工事に「夏休み」の制度を導入する方針を明確にしました。炎天下での過酷な作業を避け、健康と安全を確保することが目的です。
具体的には、7〜8月の工事休止を受注者が国と協議できるよう、発注仕様書に明記。状況に応じて数週間〜2か月程度の休止期間が設定され、必要があれば工期の延長も認められます。2026年度から全国展開が予定されており、すでに関東地方整備局・宇都宮国道事務所では試行が始まっています。
この制度は、単なる休暇制度ではなく、「猛暑期間中は計画的に工事を止める」という、新しい働き方の指針でもあります。建設現場の過酷さに対し、行政レベルで改善が進んでいることは非常に大きな意味を持ちます。
現場の声と変化──“働きやすさ”は本当に実感できている?
制度導入とともに、実際に現場で働く人々からもポジティブな声が上がっています。試行された現場では、受注者や作業員から「健康管理の面で大きな安心感があった」「お盆時期以外でも自由に休暇が取れるようになった」といった評価が寄せられています。
これまで、建設業においては「繁忙期だから休めない」「現場が止まる=損失」といったプレッシャーが強く、休暇取得は形式的なものに留まりがちでした。しかし今回の「制度としての夏休み」は、休むことが認められるだけでなく、それに伴う工期調整までがパッケージ化されている点で画期的です。
作業員一人ひとりの体調や生活リズムに配慮し、長く働き続けられる環境を整える──そんな変化が、現場レベルでも少しずつ浸透しているのです。
今後、建設業界はどんな働き方がスタンダードになる?
国の制度改革に加え、民間企業でも週休2日制の導入やICT活用による効率化など、建設業界の“働き方”は大きく変わりつつあります。作業管理のデジタル化、遠隔での進捗確認、書類のペーパーレス化といった技術の導入が進み、「現場に張り付き続ける」スタイルからの脱却が進行中です。
こうした流れは、若年層や未経験者にとっても参入のハードルを下げるものです。「経験がないと無理」「体力勝負」といったイメージも徐々に薄れつつあり、“安定して続けられる仕事”として建設業を選ぶ人も増え始めています。
今後は、働き方改革をいち早く実践する企業・現場が、優秀な人材の確保においても有利になっていくでしょう。業界内の格差が広がる分、自分に合った職場を見極める視点も重要になってきます。
“ブラック”のイメージを脱却中?これから建設業界が「ねらい目」である理由
「ブラックな業界」というイメージを抱きがちな建設業ですが、実はその“中身”は今、大きく変わり始めています。法律や制度が整備され、休みやすくなり、健康面での配慮が進み、働く側の権利がしっかり守られるようになってきています。
もちろん、すべての企業や現場で理想的に進んでいるわけではありません。しかし、こうした変化を積極的に取り入れる企業は確実に増えており、それらを選ぶことで“働きやすさ”は十分に手に入れられる時代です。
もし今、あなたがフリーターとして将来に不安を抱えていたり、ブラック企業での勤務に疲れていたりするなら、建設業界は新たな選択肢になり得るでしょう。「変わりつつある今だからこそ」、入りやすく、将来も見据えやすい。そんな“ねらい目の業界”として、建設業界を見直す価値は大いにあるのです。
まとめ
建設業界で進む働き方改革──それは一時的なトレンドではなく、持続的な“現場の変化”です。
国の制度や法改正、受注企業の工夫、そして現場の声を受けて、今後は「安全で働きやすい建設業」が当たり前になっていくでしょう。
もしあなたが「ブラック企業に疲れた」「自分に向いた仕事が見つからない」「これから長く続けられる仕事がしたい」と感じているなら、今こそ建設業界に目を向けてみてください。現場には確かな変化と、あなたの力を必要とする未来があります。
エンジニア株式会社(https://e-ngineer.co.jp/)では、こうした変化に柔軟に対応した働き方を実現しています。
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参考
■厚生労働省「熱中症対策が義務化されます(令和7年6月1日施行)」
https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/newpage_01552.html
■建設業労働災害防止協会/厚労省の周知資料
https://www.ao-kensaibou.com/news/news-11310/
■国土交通省「土木工事共通仕様書」令和6年3月改訂版
https://www.cbr.mlit.go.jp/architecture/kensetsugijutsu/doboku_shiyousyo/r06.htm
■国土交通省「STOP! 熱中症 建設現場ガイド」
https://www.mlit.go.jp/common/001292278.pdf
■参考コラム:労働安全衛生法改正と建設業対応
https://www.office-mizuki.com/column/post-3728/
■日本経済新聞|国発注の土木工事に「夏休み」 国交省が仕様書明記、熱中症対策で推奨https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA221J90S5A920C2000000/?type=group#AgAUAgAAMDgx